#2 映画の着想・TVディレクターとの出会い

2013年4月16日

『樹海のふたり』はどのようにして発想・企画されたのですか?必ず質問される項目である。

映画のキャッチコピーも『実話からインスパィヤされたヒューマンドラマ』とあるから、まずこの話から始めよう。

日頃私は、テレビドキュメンタリーや情報番組を主な仕事としている。

2004年、民放の番組で「樹海」を舞台に制作を進めていた時、局のプロデューサーから二人のフリーディレクターを紹介された。

彼らは、樹海付近のバス停に何日間も張り込み、自殺志願者を見つけ出し救出する場面を撮影、番組化する男たちだという。

二人と会うまでは「いいかげんな奴らだろう・・・」と思っていた。

しかし、一緒に仕事をして見ると、彼らは驚くほどピュアな男たちであった。取材に丸ニケ月間費やし、膨大な撮影済みのテープを手に疲労を滲ませ東京に戻ってきた。その映像には、樹海で繰り広げられる生と死のドラマが生々しく切り取られていた。

番組は高視聴率を獲ったが、彼らは決して有頂天にになる人物ではなかった。

「俺たち、自殺を決意した人を助ける。しかし、その後の人生に何の責任も持たない。放送したらギャラを貰ってそれで終わり・・こんな事をしていていいのだろうか」

「命を助ける事を大義名分にして、人の命を食い物にしてないか・・・」彼らは自分たちの行為に疑問を持ち、激しく葛藤していた。

不器用で愚直な二人にすっかり魅了された私は、番組が終わっても酒を酌み交わす仲となった。そして、彼らから、樹海で体験した様々な話を聞くことになる。そのエピソードは、おかしくて、切なくて、人間臭いものだった。

私は、彼らから強烈な映画的インスピレーションを得て、直感的にすぐに「映画化したい」と思った。

0529-樹海実景霧-_MG_0347

「樹海」は四方八方同じ風景が続く万華鏡のような世界が広がり、一度迷い込んだら二度と出る事が出来ないと云われている。

人生なんて、樹海のど真ん中にいるようなものじゃないか・・・どこが出口か判らずウロウロしている・・・」主人公のふたりが呟くセリフは浮かんだが、しかし、映画が完成するまで、それから8年もかかる事になる・・・。まさに私自身が「樹海」の中で方向性を無くし出口を探しす8年間だった。

 

 

お知らせ

アーカイブ

2013

123456789101112