#15 脚本作業 樹海体験②

2013年5月24日

樹海」は、住所表示で云えば「青木ケ原」、山梨県側に広がる原生林である。

広さは山手線の内側に匹敵する。 この不思議な森の誕生は、約1200年前の大噴火に遡る。富士山北西から流れ出た溶岩は、全ての生命を焼きつくしながら湖へと向かい、現在の西湖・精進湖・本栖湖まで達した。この冷えた溶岩台地が樹海の最初の姿だった。 数千年の時を経て、死の溶岩台地にやがてコケ類などの小さな命が宿り始める。

樹海内は一面苔類に覆い尽くされている。

樹海内は一面苔類に覆い尽くされている。

樹海に入ってまず私の目を奪ったのは、その木の根である。 まるで紐クジのように、どの根がどの木か判らないほど、ヘビのように複雑に絡み合っている。なぜなら、樹海内の表土は今でも数十センチしかなく、木は地層深く根を張ることが出来ない。 大きな木は巨大な溶岩石を抱きかかえ、それを支柱に横へ横へと根を伸ばしている。小さな木は巨木の根や幹に幾重にも絡みつき、必死に体を支えている。そして、力つきた木の幹には、新しい芽が生え始めている・・。

大きな木の下は溶岩石。この岩を抱え込むように立つ木々。

大きな木の下は溶岩石。この岩を抱え込むように立つ木々。

樹海」は、死の大地から奇跡的に命が蘇り、今でも、日々激しい生存競争が繰り返えされる「命の森」だった。

この生と死のパラドックスは『樹海のふたり』の底流として、脚本に色濃く滲み出して 行こうと考えた。

しかし、この映画を通して「命の大切さを訴えたり、自殺はいけません」など、教条的なおしつけがましい事は表現としては避けなければならない。そこで、自閉症児・光一が描く「絵画」をファクトにして伝える手法に絞り込んだ。ここら辺の事はあまり書くとネタばれになるので、スクリーンで観て下さい。

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